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旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

≪ハーフ.ア.チャンス≫

ドロン特集第一回、最終夜、≪ハーフ.ア.チャンス≫



こうやってアランの映画をまとめて観てみると、
彼の作品のテーマは一貫していて、

仮に法的に罪になるようなことをしても、
道義的に許せないものへの反抗、反逆、勇気へと、
立ち向かう男らしさがあることに気づく。
常識の世界で、また、モラルに一見反しないような世界の
人間達に案外と薄情な、よこしまな、また、
横暴、根付いた見えない悪を持ち合わせた人間が多いと言うことを
示唆し、それに立ち向かう彼のポリシーというものの顕れが
作品に投影されている。
そういった作品に情熱を傾けてきたドロンという人物の
魅力に気付く。
美しい顔も武器だし、ダンデイな彼も魅力だが、
それにもまして、そういうテーマに徹底して取り組んだ
アランに脱帽しましたね。
来月の作品はもっとそれが現れている、≪パリの灯は遠く≫が
証明してくれます。

スターはいろんな役を演じる。
ハリウッドのスターを観ると良くわかる。
イメージダウンする役を嫌う役者もいるだろう。
しかし、人物、ドロンの役者魂は役柄と共に作品の一貫したテーマに
固執し、生きる上で大事なものが何か、
殺し屋でも、強盗でも、刑事でも、その形はどうであれ、
その人物に共感を感じるものが何か....?
観終わってじわーっとくる暖かな男の律儀さと勇気と
その人間性を最も追及しつづけたドロンその人の
生き様ではなかろうかとさえ、感じた10日間でありました。

いろんな、役を変えた中に、同じものがいつもある。
それが、訴えてくるのだと気付きましたね。
さて、第一回、アラン.ドロン特集も今日の作品で一応終わります。
彼の引退作品、1998年度製作の≪ハーフ.ア.チャンス≫。

この作品はアランとジャン.ポール.ベルモンドのそれまでの
作品を把握していないと面白味は半減します。

アラン=作品の特徴、キャラクターを把握、
ジャン=作品の特徴、キャラクターを把握していないと、
せっかく監督が贈り物としてくれたこの作品が半分しか楽しめないと申し上げておきます、
ストーリーはいたってシンプルです。
プロデユーサー、クリスチャン.フエシュネール(ボンヌフの恋人)を完成させた伝説の人...が製作。

フエシュネールは
監督に、
かっつては、ドロンやジャンをアイドルとして育ち、
≪仕立て屋の恋≫、≪髪結いの亭主≫、≪タンゴ≫といった
作品を送り出した、フランスを代表するパトリス.ルコントを
指名した。

アランとジャンは1966年に≪パリは燃えているか≫で初共演。
1970年の≪ボルサリーノ≫が、2度目の共演で、
本国フランスだけでなく、世界中にヒットをかっ飛ばした。
≪ハーフ....≫は、
製作に関して、ジャンがテレビ出演でちらっともらしたところ、
話題となり、封切るや否や、このまさに”夢の共演”は
フランスでは、興行成績、≪タイタニック≫を一位の座から
引き摺り下ろしてしまったそうだ。

ストーリーはといえば、母親に育てられた20歳の娘アリスが
母の遺言で知ったパパ....
同時に二人を真剣に愛したのでどちらがパパか分からない...
そのパパ二人を見つけ、事件に巻き込まれ、パパ二人が、
ロシアの武器商人とその殺し屋に立ち向かっていくと言う
アクションもの。
パパ二人は互いに自分の娘だと言って譲らないが、
血液検査で決めようと。。。

レオ(ジャン)はもと兵役で地雷や爆弾作りに携わっていた、
今は、車のデイーラーをやっており、名車をコレクションしている。
ジュリアン(ドロン)は、
高級レストランの経営者だが、隠れ部屋で趣味で
宝石を盗むテクニックをいまだ研究している。
だから、警察の記録に前科はないが、何十件もの容疑者として
リストアップされている。
(これも、過去のアランの作品で強盗や殺人をやった
キャラクターを匂わせているのですね)

さて、二人は染色体の話で、アリス(フランチポップスの
若き歌姫、ヴアネッサ.バラデイ)が妙に車に強いのと、
機械にも強いので、どちらの娘か決めがたいのだ。
自室で ダイヤモンドをお宝に据え、例のごとく
うまく掻っ攫う方法を編み出しているアランパパ。
これは彼の今までの作品のキャラクターを引き継ぎ、
オーバーラップさせている監督の心憎いまでの配慮であります。
ジャンとて同じ。


悪に向かって、爆弾や、リモコン操作の機械を作ると妙に感がよい
アリス。
まあ、敵の所有物も、派手に爆発するわ!!
ロシアの悪に渡るはずだった5000万フランが
アリスがちょっと拝借した車のトランクに入っていたのを
若き刑事が見つけ、悪と二人パパの関係を疑り、
二人パパがくすねたように仕掛け、悪とパパたちを同時に
あぶり、闘わせようとしたからややこしくなる。
ジュリアンパパはヘリコプターを爆破され、
レオパパは名車を爆破され、頭にきた二人はアリスと三人、
爆弾作りをはじめる。
もち、機関銃もゲット....ここでボルサリーノの
テーマ曲がかすかに聞こえてくる涙ものなのよ。

ヘリと車のチェイスあり、
レオは戦車を作って敵の根城に向かい、
ジュリアンは作ったリモコンを持って、
敵に捕らえられたアリスを救いに。。。
最後は追われる車に上空のジュリアンとアリスがヘリから
レオに縄梯子をにおろす。
”彼の得意わざさ!”とアランパパ。
これもジャンの作品、≪リオの男≫や、≪カトマンズの男≫などの
ジャン作品をわかっていないと
わからん人は全然わかんねえだろな。

敵とドンパチやっている最中にジャンパパ、古傷が痛む。
アランパパは気遣って”大丈夫か?仕事で?”
ジャンパパ”女の亭主がやきもち焼きでなあ”と。
ここで、アランパパはいつものごとく
”これが終わったら医者に見せろよ!”と駄洒落は言わない。
ジャンのキャラクターはいつも女の子にちょっかいを出しては
生傷が絶えなかったのです。

わかる人にはわかるネタが随所に散りばめられ、たまりません!
娘アリスにでれでれになるパパ二人は素敵なおじ(い)さんに
なっていました。

フランス映画をこよなく愛する私、いや、方達には、
最初で最後の今世紀最高のプレゼントでした。
こんなプレゼントはこの先無い! と とても幸せでした。
なんだか、彼らの同窓会に参加させていただいて、
たっぷりと語り合った...そんな満腹感でいっぱい!

  いろんな役の中に、いろんな遊びや、体験を通し、男63歳、
ドロンはドロンであって、80作品の80人のひとと重なり、

ベルモンドも同じ遊び仲間として、(不仲説は嘘)
過去の幻影をそのままに一緒に引きずって遊んでいる作品。

過去の作品を堪能していると、彼らの会話がどういう意味を
あらわしているか.そこがまた、わかると面白いという見本。

ハーフ.ア.チャンスは
映画作りを堪能したことと、生きてきた様が彼ら自身であると言う
前程で楽しんで欲しいと私達に言ってるような気がします。

作品の中の会話を引用すると、
”あの歳で良くやったあ。”

アクションも息切れ寸前。それをもギャグにしてしまうふたり。
40年間の中味をいっぱい詰めた楽しい、楽しい引退作品です。
またまた褒め倒してしまいました。
ヴイヴア!アラン。
ヴイヴア!ジャン(おまけ)

さて、どちらが本当のパパだったのでしょうね???

アランフアンは、
わたくしが、紹介した作品、
また、来月紹介した作品を堪能なさってから、
この引退作品をご覧になった方が、うんとうんと堪能できる作品です。

過去の作品を観ずして、この作品を観ても、
本当の面白さは理解できませんことを
強く、強く申し上げておきます。






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